「ぐりとぐら」は、子どもたちに愛される日本を代表する絵本シリーズのひとつです。主人公の「ぐり」と「ぐら」は、いつも仲良しな２匹の野ねずみで、料理をすることと食べることが大好き。二人は野菜作りも得意で、自然とともに暮らしを楽しむナチュラリストの一面を持っています。絵本では、楽しい冒険や、自然の中での発見、そして何より食べることの楽しさが描かれ、読み手の想像力をかき立てるストーリーが展開されます。
「ぐり」と「ぐら」について
読者にとって、ぐりとぐらの見分け方は大きな謎であり楽しみでもあります。ふたりは双子のきょうだいですが、どちらが「ぐり」でどちらが「ぐら」か、一目ではわかりづらいかもしれません。しかし、絵本の表紙や、タイトルの文字の色をよく見てみると、ヒントが隠されています。通常、青い服を着ているのが「ぐり」、赤い服を着ているのが「ぐら」です。
「ぐりとぐら」の誕生秘話
「ぐりとぐら」が初めて誕生したのは1963年のことです。当初、この二人は月刊雑誌「母の友」で初登場しました。その時のタイトルは『たまご』というもので、ぐりとぐらが大きな卵を使ってカステラを作る物語でした。読者からの反響が大きく、その後すぐに月刊絵本「こどものとも」93号として絵本『ぐりとぐら』が刊行されました。12月号で登場したこの絵本は瞬く間に人気となり、ぐりとぐらは子どもたちの心を掴みました。
カステラと子どもたちの憧れ
「ぐりとぐら」の物語の中で、特に印象的なのが二人が作る大きな黄色いカステラです。このカステラは、物語の中心として描かれ、読者にも強いインパクトを残しています。ふたりが森の中で大きな卵を見つけ、どんどん材料を集めて手作りするこのカステラは、子どもたちにとって、想像するだけでワクワクする存在です。ふんわりとしたカステラが大きな鍋の中で焼きあがるシーンは、世代を超えて子どもたちの憧れであり続けています。
中川李枝子と山脇百合子姉妹の共作
「ぐりとぐら」の物語を生み出したのは、姉妹である中川李枝子さん（文）と山脇百合子さん（絵）です。中川李枝子さんは、当時保育園で保育者として働きながら、多くの子どもたちとお話を楽しんでいました。彼女は「ちびくろさんぼ」に出てくるホットケーキよりも、もっと上等でおいしいものを子どもたちに紹介したいと思い、カステラが出てくるお話を考案しました。
一方、絵を描いた山脇百合子さんにとって、『ぐりとぐら』は初めての絵本の仕事でした。当時、大学でフランス語を専攻していた彼女は、野ねずみを描いたことがなく、少し戸惑いながらも姉と共に作品を作り上げました。結果として、野ねずみの「ぐり」と「ぐら」は多くの読者に愛されるキャラクターとなり、今でも多くの子どもたちに親しまれています。
シリーズの広がり
「ぐりとぐら」は、その後も数多くの続編が作られ、シリーズとして成長していきました。クリスマスにケーキを作る話や、海辺での冒険、さらには山でのキャンプなど、季節やシチュエーションごとに新しい冒険が描かれています。物語の中で、ぐりとぐらは常に仲良しで、助け合いながら課題を乗り越え、楽しみを共有します。この絆や協力の精神は、子どもたちにとっても大切な教訓となるでしょう。
また、ぐりとぐらの物語はシンプルでありながらも、子どもたちの想像力をかき立てる要素が豊富です。彼らが出会う自然や動物、そしてその中で行う料理やお祭りなど、日常生活の中での楽しさが詰まっており、どの世代の読者にも楽しんでいただける内容です。
ぐりとぐらのメッセージ
「ぐりとぐら」の物語には、大切なメッセージが込められています。それは、自然の中での発見や、友だちや家族と協力して楽しむことの大切さです。ふたりがどんな困難に出会っても、力を合わせて解決し、そして必ず笑顔で物語を終えます。そんなふたりの姿は、読者に勇気や希望を与えてくれるのです。
今なお愛される理由
「ぐりとぐら」が初めて登場してから60年以上が経ちましたが、今でもこの絵本は多くの子どもたちに愛され続けています。その理由は、シンプルで温かみのあるストーリーと、どこか懐かしいイラスト、そしてふたりの作る料理や自然との関わりが現代の読者にも共感を呼んでいるからでしょう。絵本を通じて、子どもたちは自分自身の世界を広げ、新しいことに挑戦し、協力することの楽しさを学びます。
また、親子で一緒に楽しむことができるのも「ぐりとぐら」の魅力です。親世代が子どもの頃に読んでいたこの絵本を、次世代に引き継ぎ、共に楽しむことで、絆を深めることができます。
まとめ
「ぐりとぐら」は、ただの絵本にとどまらず、世代を超えて多くの人々に愛され続ける作品です。ふたりの冒険や料理作り、そして協力し合う姿は、子どもたちにとって大切なメッセージを伝えてくれます。自然との調和や協力の大切さを感じながら、親子で一緒に「ぐりとぐら」の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
